食の真実 #002 「マーガリンはなぜ生まれたか」──植物性だから安全、という神話の起源

「バターよりヘルシー」──誰がそう決めたのか、考えたことがありますか?

マーガリンが日本のスーパーに並び始めたのは1960年代。それから半世紀以上、「植物性だから体にいい」「バターより安全」というイメージが定着しました。

でもこれ、最初から誰かが意図して作ったイメージです。


マーガリンの誕生、その動機は「健康」ではなかった

1869年、フランス皇帝ナポレオン3世が懸賞金をかけました。テーマは「バターの代替品を作れ」。

理由は健康のためではありません。軍隊と労働者に安く食べさせるためです。

当時バターは高級品で、大量に必要な軍の食料には向かなかった。だから「安くて、常温で固まる、バターに似た何か」が求められた。

化学者イポリット・メージュ=ムーリエが牛脂を原料に作り上げたのが最初のマーガリンです。「健康食品」として生まれたのではなく、コスト削減のために生まれた食品です。


20世紀に入って、植物油に変わった理由

当初は動物性脂肪が原料でした。それが20世紀に入って、植物油ベースに変わります。

理由はシンプルです。植物油の方が安かった。

ただし植物油は常温で液体です。固形にするために「水素添加」という化学処理をします。これで固まる。これが「トランス脂肪酸」を生み出す工程です。

当時の業界はトランス脂肪酸の害を知っていたのか、知らなかったのか。それはわかりません。でも一つだけ確かなことがあります。調べようとしなかった。 なぜなら売れていたから。


「植物性だから安全」神話はどこから来たのか

1950〜60年代、アメリカで「飽和脂肪酸(バターや肉の脂)が心臓病の原因」という研究が広まります。

これを受けて「動物性より植物性を」という流れが生まれ、マーガリンメーカーは一斉にこのキャンペーンに乗りました。

「植物性だからヘルシー」「バターよりいい」という広告が世界中に広がります。

でも後の研究でわかったことがあります。飽和脂肪酸より、トランス脂肪酸の方がよほど危険だった。

動物性の脂を避けるために選んだマーガリンが、より悪いものだったという皮肉です。


世界が規制し始めたのに、日本だけ動かない理由

アメリカは2018年に食品へのトランス脂肪酸添加を全面禁止しました。EU、カナダ、韓国なども規制を強化しています。

日本は?

規制がありません。

厚生労働省は「日本人の平均的な摂取量はWHOの目標値を下回っている」として規制不要と判断しています。

「平均値が安全なら個人も安全」という論理です。でもマーガリンを毎日食べている人の摂取量は、当然平均を大きく上回ります。

規制がないのは「安全だから」ではなく、「業界への影響が大きすぎるから」という見方もできます。

日本のマーガリン市場は年間数百億円規模。メーカー、小売、給食、外食──影響を受ける業界は巨大です。

誰も悪者にしたくない。だから動かない。


では何を使えばいいか

バターを使ってください。本物の、発酵バターなら尚良し。

「高いから」という気持ちはわかります。でも毎日少量使うものだから、本物を選んでください。

マーガリンは「安く大量に食べさせる」ために生まれました。あなたの体はそのターゲットになる必要はありません。


最後に

マーガリンを作った人たちを責めたいわけではありません。ナポレオン時代の化学者は、トランス脂肪酸の害など知りようがなかった。

でも現代は違います。害がわかっている。それでも「平均値が安全」という論理で規制しない国で、私たちは毎日買い物をしています。

知っている人だけが、選べる。

冷蔵庫の中身を変えるのは、あなたです。

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