「バターよりヘルシー」──誰がそう決めたのか、考えたことがありますか?
マーガリンが日本のスーパーに並び始めたのは1960年代。それから半世紀以上、「植物性だから体にいい」「バターより安全」というイメージが定着しました。
でもこれ、最初から誰かが意図して作ったイメージです。
マーガリンの誕生、その動機は「健康」ではなかった
1869年、フランス皇帝ナポレオン3世が懸賞金をかけました。テーマは「バターの代替品を作れ」。
理由は健康のためではありません。軍隊と労働者に安く食べさせるためです。
当時バターは高級品で、大量に必要な軍の食料には向かなかった。だから「安くて、常温で固まる、バターに似た何か」が求められた。
化学者イポリット・メージュ=ムーリエが牛脂を原料に作り上げたのが最初のマーガリンです。「健康食品」として生まれたのではなく、コスト削減のために生まれた食品です。
20世紀に入って、植物油に変わった理由
当初は動物性脂肪が原料でした。それが20世紀に入って、植物油ベースに変わります。
理由はシンプルです。植物油の方が安かった。
ただし植物油は常温で液体です。固形にするために「水素添加」という化学処理をします。これで固まる。これが「トランス脂肪酸」を生み出す工程です。
当時の業界はトランス脂肪酸の害を知っていたのか、知らなかったのか。それはわかりません。でも一つだけ確かなことがあります。調べようとしなかった。 なぜなら売れていたから。
「植物性だから安全」神話はどこから来たのか
1950〜60年代、アメリカで「飽和脂肪酸(バターや肉の脂)が心臓病の原因」という研究が広まります。
これを受けて「動物性より植物性を」という流れが生まれ、マーガリンメーカーは一斉にこのキャンペーンに乗りました。
「植物性だからヘルシー」「バターよりいい」という広告が世界中に広がります。
でも後の研究でわかったことがあります。飽和脂肪酸より、トランス脂肪酸の方がよほど危険だった。
動物性の脂を避けるために選んだマーガリンが、より悪いものだったという皮肉です。
世界が規制し始めたのに、日本だけ動かない理由
アメリカは2018年に食品へのトランス脂肪酸添加を全面禁止しました。EU、カナダ、韓国なども規制を強化しています。
日本は?
規制がありません。
厚生労働省は「日本人の平均的な摂取量はWHOの目標値を下回っている」として規制不要と判断しています。
「平均値が安全なら個人も安全」という論理です。でもマーガリンを毎日食べている人の摂取量は、当然平均を大きく上回ります。
規制がないのは「安全だから」ではなく、「業界への影響が大きすぎるから」という見方もできます。
日本のマーガリン市場は年間数百億円規模。メーカー、小売、給食、外食──影響を受ける業界は巨大です。
誰も悪者にしたくない。だから動かない。
では何を使えばいいか
バターを使ってください。本物の、発酵バターなら尚良し。
「高いから」という気持ちはわかります。でも毎日少量使うものだから、本物を選んでください。
マーガリンは「安く大量に食べさせる」ために生まれました。あなたの体はそのターゲットになる必要はありません。
最後に
マーガリンを作った人たちを責めたいわけではありません。ナポレオン時代の化学者は、トランス脂肪酸の害など知りようがなかった。
でも現代は違います。害がわかっている。それでも「平均値が安全」という論理で規制しない国で、私たちは毎日買い物をしています。
知っている人だけが、選べる。
冷蔵庫の中身を変えるのは、あなたです。
